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有給休暇その2

「なるほど。つまり普通の会社では、ある程度主張すれば有給休暇を取らせてもらえないなんてことはないんですね」
「まあ、法律的にはそうだね。ただ、法律を順守している企業ばかりではないというのが現状だが。とりあえず、ウチのようにある程度以上の規模の会社であれば、大丈夫さ」

 
実際、会社の規模が小さいほど、法違反は見つかりにくいものだ。従業員が訴える可能性は人数が多ければ当然高くなるが、それ以上に小さな会社では後でバレることを恐れて泣き寝入りになりやすい。
規模の大きな会社、特に労働組合のある会社では、ある程度の自浄作用が期待できる。また、数年前に行われた厚生労働省の「サービス残業一掃キャンペーン」でも、誰もが名前を知っているような大企業を次々と摘発することで見せしめにされた経緯がある。
もちろん、中小企業でも、きちんとコンプライアンス(法令順守)に気を配って労務管理を行っているところもあるが、残念ながら統計的には圧倒的に大企業の方が法を守っている。

「有休はいつでも好きな時に申請できるんですよね?」
大分山田君の表情が明るくなってきた。自分が運良く大企業に入れたことで安心したようだ。
「基本的には自由だよ。でも、みんなが一斉に同じ日を希望したら会社が困るだろ?」

有休の時季指定については結構誤解されている部分があるので要注意だ。
まず、社員には「時季指定権」というのがある。これは山田君が言ったように、いつでも好きな日を指定できるという権利だ。
ただ、この権利も無制限に認めてしまうと今度は会社側が回らなくなってしまう。なので、会社側にも「時季変更権」というものが与えられている。
つまり、原則として社員の側が有休の時季を指定できるのだが、それが業務上どうしても困るという場合には、会社側はその時季を変更することができる。
実は誤解が多いのはこの「時季変更権」なのだ。
例えば、有休取得を来年に変更するというのも許されるか?
おそらく常識的にありえない話だが、変に労働基準法を知っている上司なら言うかもしれない。
このあたり、労働判例では、「配慮」「要請」というちょっと婉曲な表現をしている。
つまり「労働基準法は、会社側にできるだけ社員の希望日に有休を取らせてあげるような配慮をするよう要請している」ということなのだ。
結局この、「時季指定権」も「時季変更権」も、どちらかを厳格に認めれば認めるほど、もう一方の権利が侵害される性質のものなので、その辺はお互いに譲り合って仲良くやってくださいね、と言っているのである。
だから、どのくらいの時季まで変更が許されるかについては、「常識的な範囲」としか言いようがないが、少なくとも来年とか、半年後とかでは常識的とは言えまい。
この場合、山田君の彼女が許してくれる範囲は、最大でも一週間が限度だろう。上司の方にもそのくらいの「配慮」は「要請」したいところである。
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